唐木俊介の雑感配信ブログ

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4月末の夜のこと、小学生の娘二人が口を揃えて「オフロさむかった」と言う。聞くと、シャワーから熱い湯が出ないとのこと。ぬるかったと。その前にシャワーを浴びた奥さんは、いつも通りだったそうだ。

 

30分ほど経って僕もシャワーを浴びた。レバーを捻ると、冷たい水が出て、やがて少しずつ温度が上がり始めた。なんや、出るやんけ。手のひらにシャワーを当てながら熱くなるのを待った。

 

と、ここで異変を悟る。熱くならない。設定温度は42度なのに、シャワーヘッドからはいつまで待っても限りなく水に近いぬるま湯が出る。給湯器のリモコンを見ると、残量表示の目盛りが一つしか点灯していない。いつもは三つくらい光っているような気がする。

 

 

なるほど。

 

 

湯を使いすぎたのだ。給湯器のタンクに湯が貯まるのを待たなければならない。

 

 

しかし僕は裸で、足元は濡れている。また外で待つのもめんどくさい。少し我慢して浴びよう。一度栓を締め、シャワーヘッドを高いところにセットして、レバーを捻った。

 

 

僕はサーフィンのために年中海に入る。ウェットスーツを着ていても、やはり真冬の海は極寒。それでも寒さに耐えながら何時間も入る。それをかれこれ15年以上繰り返しているので、寒さには耐性ができている。真冬の海に身を浸すことを思えば、自宅の風呂でちょっと冷たいシャワーを浴びることなんて、別にそこまで寒かった。

 

 

寒かった。

 

 

 

僕は叫んだ。激しく震えたが、グッと耐えた。待っていればそのうち慣れるはずだ。そう思って冷たいシャワーを背中に浴びていると、だんだん寒さは増してきた。

 

 

増してきた。

 

 

 

ダメだ。早く出るしかない。急いで全身を洗い、泡を流す。

 

 

風呂から出ると娘たちが笑っている。奥さん曰く、風呂の中から聞こえる僕の叫び声に爆笑していたそうだ。よし、ウケた。叫んだ甲斐があった。

 

 

早速リビング側のリモコンを操作する。それらしいボタンを押しているとやがて画面に「沸き増し運転待機中」と表示された。どうやらセットできたようだ。

 

 

 

しかし、直近でそんなに沢山お湯使ったっけ?

 

 

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翌朝、湯が沸いただろうかとリモコンをチェック。昨夜設定を変更してから10時間以上経った。見ると

 

 

 

 

目盛りはゼロになっている。「沸き増し運転待機中」という表示も消えている。

 

なんだこれは。

 

 

メーカーの問い合わせ窓口に電話をかけ、ひと通り症状を説明した。室外機に原因があると思われ、訪問点検が必要とのこと。しかも「連休明けの対応となります」うむ、仕方ないか。

 

 

 

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不調の間は同じ市内にある実家の風呂を借りることにした。しかし、湯のために車に乗って移動するというのがどうしてもめんどくさい。本当にリモコン操作では直らないのか、という気持ちもある。

 

まだ試していなかった方法として、ブレーカーでタンクと室外機の電源を全て落としてみた。少し経って再起動して、リモコンでピコピコやっていると、再度「沸き増し運転待機中」の表示が出た。

 

 

 

 

しかも今回、屋外の室外機を見に行くと「ウーン」と鳴るのが聞こえた。

 

 

30分ほど経って、リモコンを見ると

 

 

 

 

 

 

きた。

 

 

初めて見る「沸き増し運転中」の文字。「待機中」ではない。「運転中」だ。しかも一番下の目盛りがひとつ点灯している。

 

 

完全にきた。

 

 

喜んでいたら、奥さんと娘たちが出かけていった。実家に行って晩まで過ごし、風呂を借りて帰ってくると言う。えっ、今から沸くよと言ったが、もう実家に連絡したので行ってくるとのこと。ふうん。僕は図書館に本を返す用があったので、夜までに湯が沸いていることを期待しながら家を出た。

 

 

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しかし、昨日の夜「待機中」と出ていたのに、今朝になると表示が消えていたのが気になる。さっき「沸き増し運転中」と出たけれど、また止まるかもしれない。今夜沸いていなかったら、わざわざ実家に行くのか。いやそれはめんどくさい。また寒さに耐えて冷たいのを浴びるか。意外と身体に良かったりするんじゃないのか・・・思いついて「風呂 冷水 健康」などと検索してみたが、サウナのことしか出てこない。まあ、冷たい水だけ浴びる人なんていないか。いや、今はいなくても、昔はいただろう。「昔は毎晩火を起こして風呂を焚くのが大変だったので、人々は水で身体を洗っていたが、これがすごく健康によかった」みたいな情報はないのか。自分の行動を肯定してくれる情報に触れたい。これはダイエット中どうしてもラーメンを食べたくなった時に「ラーメン 太らない」などと検索するのに似ている。しらんけど。

 

 

 

ところでこれ、今、おれは何を考えているんだ・・・図書館の中をウロウロしながら、そんなことを思うのであった。

 

 

・・・と、昔の風呂の話といえば、落語の『湯屋番』や映画の『テルマエ・ロマエ』などが思い浮かぶが、どちらも大衆浴場の話だ。テルマエ・ロマエの風呂、湯気出てたよな。やっぱり昔も風呂は温かかったのか・・・僕は風呂に関する本を何冊か手にとった。

 

 

まずは江戸時代の湯屋。湯屋というだけあって、やはり湯を使っていたようだ。

湯屋は平生は早朝から客を入れ、夕方は日没から二時間限り営業した。冬ならばおよそ午後五時ごろには表戸を鎖して客を断った。しかし、毎年大晦日は一晩中、風呂を焚いて浴客を入れた。夜明けごろ湯を落とし、水を汲み入れてまたすぐ焚きはじめて、元旦には未明から客が来た。

河上利勝(1977)『風呂と人間』メヂカルフレンド社 P79

 

 

テルマエ(=古代ローマの公衆浴場)も湯を使っていたようだが、こちらは大昔なんてものではない。テルマエの中で最も古いものはアグリッパの大浴場で、紀元前26年〜紀元前19年に建てられたという。次がネロの大浴場で紀元後64年、その後2世紀にトラヤヌスの大浴場、3世紀にカラカラの大浴場と、その古い歴史に驚くばかりだ。

古代ローマの風呂は基本的には、冷・暖・熱・暖・冷と、徐々に温めていき、また徐々に冷やしていく方法をとっている。(中略)高温室は約五十度の温度であったと推定される。ここで温まり汗をかくのであるが、この部屋には約四十度の湯の入った大きな浴槽があり、これにも浸かる。

吉田集而(1995)『風呂とエクスタシー』平凡社 P 91

 

 

わかった。今も昔も、みんな温かい風呂に入っている。僕も温かいのがいい。

 

 

 

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家に帰ると、リモコンの表示が「沸き増し運転待機中」に戻っていた。

 

 

 

あれ、おかしいな、と、もう一度よく見てみると、「沸き増し運転待機中」に戻っていた。

 

 

戻っていた。

 

 

家を出る前「沸き増し運転待機中」から「沸き増し運転中」へシフト。今度こそ沸くだろうという僕の期待は見事に裏切られた。

 

 

なぜだ。さっき「沸き増し運転中」だったのに、なぜまた待機なんだ。待機すな。僕は「沸かす」ボタンを強く押した。いろんなボタンを押しまくった。室外機を叩いたり揺らしたり、ブレーカーを落として再起動してみた。するとどうか。室外機はまたウーンと鳴っているか。見に行くと、何も聞こえない。何も聞かせてくれない。壊れかけ、いや完全に壊れている。僕のイライラだけが沸き増し運いやそんなことを考える余裕はなかった。

 

 

 

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さてどうする。車に乗って実家に行くか。

 

 

いや、めんどくさい。

 

 

冷たいのを浴びればほんの数分のこと。昨日耐えたんだから、今日も耐えられるはずだ。

 

 

シャワーヘッドを高いところにセットし、レバーを捻った。

 

 

 

 

 

これが、すごかった。

 

 

どう考えても昨日より冷たい。

 

 

すぐに悟った。昨日は少しだけタンクの中にお湯が残っていたのだろう。その少しの湯が、今日はたぶん、ない。

 

 

昨日⇨湯:水=1:9

今日⇨湯:水=0:10

今日=水

 

 

僕は絶叫した。激しく震えつつ慣れるのを待たない。待っても慣れない。冷たいシャワーを浴びていると、だんだん寒さは増してくる。早く出たい。震えながら全身を洗い、水で泡を流した。

 

 

 

たった数分とはいえ、壮絶であった。今日も叫んだ。せめて昨日のように娘たちにウケていれば・・・期待しつつ勢いよくリビングのドアを開けると、誰もいない。おーい!と大きな声で呼ぶと、2階から返事が聞こえた。そうか、みんな2階にいたのか。階段の登り口で「パパの声聞こえたー?」と聞くと「なにがー?」と返ってきた。「なんでもない」と返す。

 

 

 

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それからはもう、実家の風呂を借りている。温かい風呂はいい。湯を浴びるのは気持ちいい。これは大昔から人々のDNAに脈々と刻み込まれてきた真理だ。今16時だけれど、もう風呂道具は準備してある。今日も実家に行く。温かい風呂に入るのが楽しみである。

 

 

 

 

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