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ろくなもん【14】
2024/12/28 -none
純が学校へ行ったのは、四月の中頃であった。 福田と名乗る教師は、机の脇に置かれた箱から黄ばんだ冊子を取り出して、純に渡した。 「二年生は工作室じゃけえの。隣の建物の一階じゃあ。この修身と ...
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ろくなもん【13】
2024/12/21 -none
近隣の瓦礫の中から使えそうな材料を集めてバラックを建てると聞いていたが、実際に藤田さんのところへ来てみると、ほとんど材料は揃っているようであった。そればかりか、純の一家が住 ...
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ろくなもん【12】
2024/12/14 -none
純の目が少しずつ見えるようになったのは、十一月の終わり頃であった。爛れた皮膚の痛みが瘡蓋の痒みへと変わるまで三ヶ月、そののち瘡蓋が剥げて生まれ変わった皮膚が表に出るまで、一 ...
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ろくなもん【11】
2024/12/07 -none
河内村の、祥雄の弟夫婦とその娘二人が暮らす家に、純の家族五人が居候することとなった。避難してきたのは四人だったが、ほどなくして、純の母シズが赤ん坊を産んだ。赤ん坊は夏恵と名付けられた。赤 ...
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ろくなもん【10】
2024/11/30 -none
己斐の駅舎は倒壊していたが、燃えたような跡はなく、辺りを見回してもどこからも煙は上がっていなかった。建物はその多くが倒れ伏せてしまっていたが、それでも純が歩いてきた市内中心部に比べると被 ...
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ろくなもん【9】
2024/11/24 -none
純の家も、最勝寺も、すべて焼けていた。白島には、家族をはじめ、知っている顔はひとりとしていなかった。 最勝寺の前で休んでいると、軍部のトラックがゆっくりと走ってきた。 「東 ...
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ろくなもん【8】
2024/11/22 -none
比治山は、標高七十メートルほどの小高い山である。丘と言ってもいい。 中腹まで登ったところで振り返ると、蟻が列を作ってぞろぞろと進むように、黒い影がふもとから連なっている。そ ...
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ろくなもん【7】
2024/11/16 -none
クボタが駆け出していった後、どうもその場を立ち去る気になれず、純は松商の生徒の身体をひとりずつ揺らした。「おい、おい」と、声をかけて回ったが、返事をする者は三人だけだった。 ...