唐木俊介のブログ

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おばちゃん

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学生時代、月に1度くらいでしょうか、友人と駅前の焼き鳥屋へ行きました。ウマい。そして安い。メニューも豊富で、壁札を読んでも何か分からないメニューも沢山。部位によっては串1本60円なんてメニューもあって、1人3000円もあれば十分に満腹感酔なその店は、いつも仕事帰りのサラリーマンや学生達で賑わっていました。

 

 

 

 

その焼き鳥屋にはいつも「おばちゃん」がいました。スーパーショートカット、前髪立て気味の七:三分けのおばちゃんは、水前寺清子さんのような風貌でした。そして声も似ていた。賑やかな店内によく通る声だったなぁ。

 

 

 

 

お店を知ったばかりの頃、おばちゃんに「ぼんちり」って何ですか?と聞・・・き終わる前に食い気味に威勢よく「オシリの肉だよ!」と返してくれました。じゃあその隣の「ほうでん」は?と聞くと、「ヘヘン。ヒミツだよ。食べたらわかるよ。食べてみな。どうする?2本??」とそんな感じで半ば強引に「ほうでん」のオーダーを通すのでした。ヒミツって何だよ・・・と友人と話したのを今でも覚えています。ちなみに「ほうでん」とは鶏の睾○です。(丸を○と書く意味よ…)外側はプリップリ、薄皮が破れると中は焼いた白子のような食感でこれがタマらない・・・癖になる逸品でした。

 

 

 

 

ウマいし安いし、おばちゃんも面白い。そして、なんとおばちゃん、お客の顔を覚えている・・・。例のほうでんの部位を聞いた日の1カ月後、再訪した時に僕らのことを覚えていてくれたのです。これには驚きました。これは忘れないし、当時の自分の日記にもそのことが書いてある。「今日はどうすんの?ほうでん?」と言われた僕は文字通りタマげたのでした(もうええっちゅうねん)。いつも満席のそのお店に、毎日一体何人のお客さんが出入りするのか…そんな中、おばちゃんが自分達のことを覚えていてくれたのも「ウマい」「安い」と同様に、その後も僕らがその店に通った理由のひとつです。

 

 

 

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大学を卒業して5年ほど経った頃でしょうか。同級生5人でその店へ。

 

 

 

 

そこにはやはり、おばちゃんがいました。

 

 

 

 

当時と変わらず元気なおばちゃんは忙しそうに店内を行ったり来たりしていました。

 

 

 

 

その日はそれぞれの卒業後や、また大学時代の懐かしい話に花が咲いたのですが、僕らの誰もが、おばちゃんとの再会を懐かしんだ。…といっても、おばちゃんは僕らのことを覚えてはいませんでした。「仕方がないよ」「卒業して何年も経ってるんだから」・・・僕らは店を出る時、おばちゃんに「学生の頃よく来たんです」と伝え、おばちゃんを囲んで集合写真を撮りました。

 

 

 

 

 

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その後、異動・転勤などありまして何年もその店を訪れることはありませんでしたが、つい先日のこと、出張で新宿に泊まることに。・・・とタイミング良く(本当に絶妙に良かった)当時一緒にその店に通った友人から連絡が。僕らは久々に再会しました。新宿からその店の最寄駅まではたったの2駅。落ち合う場所は言わずもがな。

 

 

 

 

 

懐かしい駅前の風景。降り立つだけでグッとくる。

 

 

真っすぐに店に向かいました。あの日集合写真を撮って以来だな…僕は勢いよく暖簾をくぐりました。

 

 

 

 

 

 

 

友人と再会。握手。

 

 

 

 

「久しぶり~!」・・・言いつつあたりを見回すも、あれ?

 

 

 

 

店内を一通り見渡しても、おばちゃんがいません。

 

 

 

・・・?

 

 

 

男性のスタッフさんに「すみません、あのショートカットのおばちゃんは今日いないんですか?」と聞くと、

 

 

 

 

「ああ、おばちゃんって、おばちゃんですね。実は去年退職しまして」

 

 

 

 

とスタッフさん。

 

 

 

 

聞くと、かなりのご高齢(スタッフさんの推定で70歳オーバー。実年齢を言わないところがおばちゃんらしい)だったそうで、体力の限界を理由に昨年退職されたとのこと。

 

 

 

 

 

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いや、ウマかった。ウマい。何を食べても当時と変わらずめちゃめちゃウマかった。店内も、おばちゃんがいないこと以外は何も変わらない。常に満席でワイワイと賑わっていました。ただ、どうもね。物足りないんですよね。「なんか寂しいよな」「だよな」…寂しさと労いの念が混ざったような、そんな気持ちで僕らは焼き鳥を頬張ったのでした。

 

 

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でもさ、俺らもう37じゃん?

 

おばちゃんだって当時60手前くらいだったんじゃない?

 

そりゃおばちゃんだって歳とるよな。

 

仕方がないよ。あれから何年も経ってるんだから。

 

 

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結構飲んだ。途中から冷酒。そのお店で冷酒を頼むと、ぐいのみをドンと机の上に置かれ、大将が一升瓶からなみなみと注いでくれます。で、溢れる。必ず溢れるまで注がれる。そして机に零れるのです。そのぐいのみの淵で口を窄めてスゥッと飲む。「いや、これ懐かしいよな」なんて言いながら、僕も友人も結構飲んだ。

 

 

 

 

もちろん「ほうでん」も食べました。上の写真の右2本が「ほうでん」です。

 

 

 

 

この日も変わらず、ウマかったです。

 

 

 

 

と、店を出る時おばちゃんに言いたかったんだけどな。しゃあない。おばちゃん、お疲れ様でした。

 

 

 

 

などと勝手におばちゃんを労う夜なのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ちなみにこちらのお店です↓↓ おばちゃんはもういませんが、ウマさ・安さ・雰囲気、どれも抜群です。お近くにお立ち寄りの際はぜひ。

 

 

鳥やす 支店 (とりやす) - 高田馬場/焼鳥 [食べログ]

 

 

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