唐木俊介のブログ

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コーヒーにハマった先輩

投稿日:

 

 

掲題のとおり、コーヒーにハマった先輩の話である。

 

 

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1年半くらい前だろうか、

 

「最近コーヒーにハマってさ、いろんな店に飲みに行ったりしてるんよ」とMさん。

 

「そうなんすね」

 

 

趣味のサーフィンを通じて知り合い、もう15年くらいお世話になっている先輩Mさんと、一緒に海に行く車中でそんな話をした。コーヒー、美味いっすよね!でも高いコーヒーって、なんかすっぱいっすよね!と、何を飲んでも美味いと感じる鈍感な僕のコメントに苦笑いしながら、Mさんは近隣の美味しいコーヒーが飲めるお店を教えてくれた。

 

 

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それから数ヶ月経って、Mさんと海で会った。海から上がって休憩していると、隣に停まっていたMさんのハイエースからガリガリ音が聞こえる。何の音かと覗いてみると、銀色の筒を持ったMさんがハンドルを回している。「何やってんすか?」「豆を挽いとるんよ」・・・ Mさん、海にわざわざコーヒー豆を持ってきたのか。Mさんは豆を挽き、僕はMさんに引いた。どんだけすっきゃねん。

 

Mさんは蓋を開けて細かく挽いた豆を見せてくれた。いい香りがした。見ると並行してバーナーで湯を沸かしている。Mさんは手際良く道具をセットし、あの、プロが使う、先が細長いヤカンでコーヒーを淹れてくれた。「ほれ、飲んでみ」

 

 

「すっぱ!!」

 

「わはは」

 

 

 

 

それから海で会うたびにMさんのコーヒーをいただくようになった。「すっぱ」「わはは」「でもうまいっす!なんかちょっとフルーティ?」「だろ」「いや、ちょっと言うてみたかっただけです」「わはは」と、そんな会話を繰り返すのだった。

 

 

 

 

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Mさんに淹れてもらったコーヒーを飲むようになって半年くらい経ったろうか、昨年末、Mさんの家に遊びに行ったら、変な機械があった。

 

 

 

 

 

 

「なんすかこれ」

 

 

「焙煎機」

 

 

 

 

 

 

 

・・・。

 

 

 

「いや、焙煎始めたんよ」とMさん。写真には映っていないけれど、この機械の下にはプロパンガスのタンクがあって、そこにはMさんの名前が入っている。ガス会社と個人で契約しているのだ。「プロパンガスがええらしいわ。都市ガスに比べて水分が少なくて、火力も安定するんよ。それにしてもどこも個人と契約してくれなくて困ったよ。手当たり次第連絡して、最後の1件でようやく契約してもらえたわ」

 

 

・・・。

 

 

・・・Mさんは、普段機械メンテナンスの仕事をしているのだ。そして週末は必ず海。焙煎なんていつやるというのか。

 

 

引く僕の目の前で、Mさんも挽く。電動の機械で豆をギャーンとやっている。蓋にメーターがついた謎のヤカンで湯を沸かしている。

 

 

 

 

 

「お湯はな、まず一投目で30秒、しっかり蒸らすんよ。ほら、ポコポコ泡が出とるやろ。これは豆から出るガスなんよ。今これ、豆とお湯が馴染んで味を作っとるんよ。ほんで二投目は(以下略)

 

 

 

 

 

からの、

 

 

 

おおお〜っ!

 

 

「いただきます!!」

 

 

 

・・・んんん!!

 

 

 

最初苦くて、少しずつ酸味が出てくる。その後で酸味が・・・

 

「おっ、おおお〜・・・うまい!ような気がします!」

 

「わはは」

 

 

 

(うむ、これが「美味い」ということなんだろうな・・・)

 

 

 

と、そんな感じである。僕は相変わらず、よくわからない。初めて吉野家の牛丼を食べた時に「こんなにうまい物があるのか」と驚いたのとは全然違う。そもそも「うまいコーヒー」というのが、よくわかっていないのだ。我ながらあっぱれ。

 

 

それにしても、これ、Mさんがルートを開拓して仕入れたスペシャルティコーヒーを、Mさんが自分で焙煎して、僕の目の前で挽き、ドリップしたものなんだよなぁ・・・Mさんが焼いた何種類かの豆を飲み比べさせてもらいながら、そんなことを思った。これは「うまい」とか「うれしい」とか、そういうのを超えて、とても不思議な感覚なんである。なんていうか、最高だ。

 

 

 

 

帰り際、

 

「ミル買ったら教えて。豆あげるから」

 

「は、はぁ・・・あの、挽くやつっすね」

 

 

 

 

家に帰って奥さんに

 

「しっかし、ハマりすぎだよMさん、今度豆くれるってさ。もう焙煎しまくってるから、消費が追い付かんらしいわ。ミル買おうか」

 

と言うと、

 

「えー、でもめんどくさくない?」

 

確かに。我が家はあらかじめ挽いてある豆を通販で買って、毎朝コーヒーメーカーでまとめてコーヒーを淹れてガブガブ飲んでいる。

 

「そうだな。もうちょい考えるか」

 

そんな会話をした。

 

 

 

 

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それから2週間くらい経ったろうか、Mさんに電話。

 

「Mさん、どうしてもMさんみたいな味にならないんすけど、やっぱあのヤカン、要りますかね?」

「ドリップケトル?おお、あると便利よ。今どうやって淹れてるの?」

「鍋っす。鍋でそーっと」

「ナナナナベ!!それはないwww  すぐ買った方がええよ。ハリオのやつが使いやすいよ。まあ普通のヤカンでもええけどさ。ところでさ、今週海行く?」

「土曜、日帰りで日本海行きます」

「俺は土日泊まりで行く。ほな向こうで合流しよう。豆持ってくわ。この前インドネシアやってみたんよ。ちょっと独特の、ツチっぽい香りがするんよな。アーシーな感じ。うまいよ」

 

「は、はぁ・・・」

 

 

 

・・・どんだけすっきゃねん。「インドネシアやってみた」てなんやねん。「アーシー」てなんやねん。

 

 

 

 

と、 Mさんのハマり具合に呆れながらガリガリと豆を挽いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

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それから2週間くらい経ったろうか、Mさんと一緒に海に行った日のこと。

 

「Mさん、手動のミルなんすけど、豆挽く時に、どうしても少しずつズレるんすよ。刃のところが。たぶん使うたびに少しずつ緩んでて、いつも同じ大きさに挽けないんですよね。あれハンドル回してるうちにちょっとずつズレてくるんでしょうね」

「そうそう、手動のやつはどうしてもそうなるのが多いよな。俺は電動だから安定してるけど」

「ああ、電動、ブレないんすね。いいっすね」

「あっ、おれ今度グラインダー買い替えようと思ってるんやけど、新しいの買ったら、古いの売ったろか?」

「いやいやそんな、大量に飲むわけじゃないんで、時々ネジ調整しながら手で挽きますわ〜」

「ま、そーだな」

 

 

 

その日、海から帰って奥さんに

 

「しっかし、ハマりすぎだよMさん、今度新しいグラインダー買うらしいわ。グラインダーいうたら、豆を挽く機械よ。なんか古いのいる?って言われたんだけど、どうしよ?」

 

と言うと、

 

「えー、そんなんいるの?業者じゃあるまいし」

 

確かに。そこまでしなくても、その都度ネジを調整しつつ、手でガリガリやればいいか。さすがにこれは要らんな。

 

 

 

と、のんびり湯を沸かしながら、自分に言い聞かせたのであった。

 

 

 

 

 

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それにしても、Mさんのハマり具合ったらない。

 

 

ある平日の夜「今週海行くんですか?」とLINEを送ると、返事に加えて

 

 

 

 

 

この写真が届いた。もはや謎でしかない。

 

 

「おい、Mさんこんなんやってるよ」と、奥さんに写真を見せると

 

「え、何これ、すごい・・・」

 

 

 

「そうそう、全部記録して、ファイルにまとめてるんよ。なんか焙煎の工程が初期加熱がどうのドライがどうの言うて、なんか3つに別れてて、その都度温度とか時間とか変えるらしいんよ。この前見せてもらった。ほらこれ」

 

 

 

 

 

 

 

・・・。

 

 

 

 

やはりMさん、ハマりすぎではないだろうか。

 

 

 

 

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コロナウィルス感染拡大。いやはや、大変なことになっている。もう全国的にステイホーム。僕もずっと家にいる。こうなるとコーヒーがすすむ。今朝リビングで、Mさん焙煎の美味しいスペシャルティコーヒーを飲みながら、

 

 

よし、Mさんのことを、ブログに書こう。

 

 

と、思い立った次第である。

 

 

 

あ、いや、ちょっと、その前にもう一杯飲も。この前Mさんにもらったエチオピア、イルガチェフェ。G-1。ウォッシュドとナチュラルのブレンド。爽やかで明るい酸味が特徴 ----- 説明するMさんの顔が浮かぶ。まずは適度な粗さで豆を挽くところから。

 

 

 

 

 

まあ、電動のグラインダーだから安心だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

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