「よくないこと」が起こるとショックを受けて、それが連発すると「なんてツイてないんだ…」なんて落ち込んだりするけれど、時間が経てばそんな気分もやがて風化し、何か楽しいことでもやるかという気持ちになる。そして好きなコトに没頭すればイヤな気持ちはどこかへ消えてリフレッシュできる。辛いこともあるけど良いコトもあるから前向いていこう、といつもの自分に戻れるもの。
ちなみに僕にはサーフィンという至福のアクティビティがある。どんなに辛いことがあろうと、そんなものは美しい波面を滑走すればどこかへ飛んでいってしまう。波や風は地球の呼吸・・・大いなる自然が描く波面の自然曲線、そこに自分の意識が一致する瞬間、あの快楽的な滑走感はサーファーにしかわからないはず・・・。つくづく思う。サーフィンに出会えてよかった。
俺、ツイてるわ…。
うん、完全にツイてる。全てのサーファーは波乗りという行為に出会った時点で、ツイているのだ。・・・と、海に行く前日ふと思う。個人的には直近2週くらいかなりショックなことが続いてなかなかヘビーな気分だったけれど、そんな気分は明日の今頃にはすっかり無くなっている。しかも今回は泊まり=サーフィン漬け。リフレッシュどころか昇天の極み。
・・・車にギアを積み込む時点でもうテンションが上がっている。サーフボード2本、ウェットスーツ、カメラ、ポリタンク、ガスコンロ、クッカー、タープ、シュラフ、クーラーボックス、etc・・・(しかし迷彩多いな・・・)プリウスの後部をフラットにしてそこにどんどん積み込んでいざ出発。ゴーサウス。
この日、日本海には波が無く、四国は小波の予報・・・小波でもいいからサーフしたいと向かったのは高知県南西部。広島県福山市の自宅から片道290kmのロングドライブ。最近まで例の脱走の件で検問渋滞地獄だったしまなみ海道を抜けて四国へ渡り、四国山地を縦走して高知県へ向かった。23時過ぎに家を出て途中2度の休憩を挟み、着いたのは4時前だったかな。人も車もいない真夜中にひとり爆走。言葉だけでは退屈に感じられるかもしれないけれど、この深夜のロングドライブは考え事にピッタリとフィットする。僕の場合はブログに書くことを考えているといつの間にか着いている。
海辺に車を停めてぼうっとしていたら東の空がうっすらと明るくなってきたので、砂浜まで歩いた。
空気が美味い・・・この夜明け前の澄んだ冷たい空気と波の音を独り占めってやっぱり…
俺、ツイてるわ…。
まだ日の出前で暗かったけれど、腹サイズの小波がコンスタントに割れているのを目視した。よし、小ぶりながらできるな。安心と同時に急な眠気に襲われた。一睡もしていないので無理もない。車内で1時間ほど仮眠。
起きて波をチェックすると、うむ、小さいけれどコンスタントに乗れている。
・・・ここでもできるけれど、もうちょいサイズ欲しいな。時間もあるし、他のポイントチェックするかと再度ドライブ。
それまではパーカーを羽織っていなければ寒かったのに陽が昇ってからは一気に夏の様相。Tシャツ1枚で十分。
・・・他のポイントは波のサイズはあるけれど形が悪かったので、最初のポイントでやることに。
久しぶりの海、コンスタントに波はある。人もまばら。言うことなし。没頭。
地球の呼吸
波面の自然曲線
快楽的な滑走感
水中でひとり悦に入る。至福としか言いようがない。
・・・と沖を見ると、少し大きめの形良いウネリがやってきた。ポジション的にどう考えても俺だ…うわ、やっぱり…
俺、ツイてるわ…。
・・・パドルパドルパドル・・・
ウネリに合わせて良いポジションからテイクオフ。ボードが滑り出すこの瞬間がまた最高。
・・・1ターン、2ターン、気持ちよく乗っているとインサイドの浅いところで大きく波が掘れ上がってきた。よし・・・
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その数時間後、僕は車で四国山地を北上していた。
一瞬のことだった。ターンでバランスを崩して右足を踏み外した時、左足が乗ったままのボードが波に押されたんだと思う。左脚が付け根から、ありえない角度で大きく開いた。確かに「プツッ」って聞こえた。悶絶。声にならない声で叫んで、ボードに寝そべるようにして海から上がった。
歩ける。全然歩けるけれど、左脚を開こう/閉じようとすると激痛が走る。なんだこれ?と車まで戻る。サーフィンのスタンスでちょっとしゃがんでみる。痛い。なんだか毎秒毎秒痛くなっているような気がする。プツッて聞こえたし、なんだこれ?
着替えてから車で2時間ほど寝ていたけれど、痛みは引かない。その間ネットで症状を調べまくったけれど、どう考えても左の大腿内転筋群のどれかが肉離れを起こしているとしか思えない。歩けるから完全断裂ではない。安静にして保存的治療を・・・というやつだ。
ちょっと悪いことが続いて冴えない直近の自分に巡ってきたサーフィンのチャンス、心待ちにしたこの日、ここしかないと鼻息荒くゴーサウス、海山川を越え片道290kmのロングドライブ、、、よし行くかと入水して、わずか1時間後の出来事。アンビリーバボーすぎる。こんなアンビリーバボーってあるかよ。タケシ風に言う元気もない。滅多にない泊まりでのサーフチャンス、これから2日間サーフィン漬けで嗚呼…ビール飲んで昼寝してまた波乗り、夜は肉焼いてビール飲んで嗚呼…明日も朝イチから海入って嗚呼…
超落ちた。もう落ちて落ちて落ちまくった。ここまで落ち込むかというくらいに落ち込んだ。悲しいとはこういうことだ。さてどうする俺・・・とその後あれこれ考えて、嗚呼サーフィンは無理だなと断念して、そのままそこにいてもしゃーないから帰るしかない・・・って車走らせて、湿布欲しいから薬局ないかなとチラチラ見てたらあった。あったけれど、
すな。
俺の気持ち代弁すなすなすなすなすなーーーーっ!!
(あ、すみません湿布ってどこにありますか?はい、あちら2番の棚にございます。あ、そうですかありがとうございます。)
・・・。
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いや、俺の行いが悪いのだ。そしてこんな時の(俺、なんか悪いことしたか・・・?)というその考えもよくないのだ。その見返り勘定みたいな考え方が良くないのだ。感謝と自戒だけしていればいいのだ。俺は全ての物事に対する感謝と自戒が足りないのだ。そんな自分の考え、言動を見直すべきなのだ。この事態にさえ、感謝すべきなのだ。たかが2日間のサーフィンが何だ。自分を見直す機会を得られたではないか。
・・・たしかにそうだ。これを機に日々の言動を見直せば何事も良い方向に・・・あ、やっぱり…
俺、ツイてるわ…。
という方向に強引にハンドルを切った。何事もありえない角度に方向転換できるということは、その日の朝、我が身を以て学んだ。ありがたいことだ。
ジンジンする左脚の付け根を押さえながら、四国山地を北上した。四万十川、吉野川と並ぶ四国三大河川のひとつ、仁淀川沿いをのんびりと。いつもは暗い時しか通らないその道沿いには沢山の美しい風景があった。ところどころで車を停めて写真を撮った。
北上するにつれてだんだんと狭くなっていく仁淀川上流。
山奥まで行くと、清流にゴロゴロと巨岩が転がっている。
四国電力の水力発電所もあった。四国山地には急水流を利用した水力発電所が点在している。
やがて高知県と愛媛県を結ぶ峠のトンネルに辿り着いた。上の地図の道程、その真ん中辺りにある「寒風山トンネル」・・・全長5キロの長いトンネルを抜ける前に、それまで登ってきた四国の山々を振り返った。
峠を越え、愛媛からしまなみ海道を渡る頃にはすっかり日が暮れていて、瀬戸内の夕景を撮ることはできなかった。
家に着いて、今、一気呵成に書いている。久しぶりに文を書いた。帰り道でずっと考えていたことをガガガ―っと書いた。朝の出来事がなければ書いていないと考えると、書くきっかけに感謝。思わぬハプニングで仁淀川や山々の美景を拝めて感謝。やっぱりこういう時はコラーゲンでしょという奥さんの計らいでその日の晩飯が大好きなモツ鍋になったことも感謝。奥さんのやさしさに感謝。やった~パパ帰ってきた~と無邪気に公園行こー!と言ってくる娘たちの笑顔に感謝(ただ、脚が・・・)。もしあのまま丸2日サーフィンしまくっていたら疲れすぎて帰り道で居眠り運転して事故していたかもしれないという想像に比べると随分と救われているから感謝。あ、やっぱり…
俺、ツイてるわ…。
ツキすぎて怖いくらいツイている。あとは左脚の筋繊維が元通りツイてくれればサーフィンもできる。3週間くらいか…と考えると一瞬落ちるけれど、次の波乗りでそれまでの事も全てリフレッシュできるのだからもうありがたすぎる嗚呼。
・・・と、長々と書いて全然うまく表せなかったけれど、全部まとめて今の気持ちを一言で表すと、ええと、ええと、
「サーフィンしたい!」
ただそれだけですはい以上!!
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