遠く辺境の地の美しい夕焼けをテレビで見た9歳の娘が「わたしも空の色がキレイなとこ行きたーい!」と言う。6歳の妹も同調している。そうだな…とスマホで天気予報を見ると明日は晴れ。・・・あそこならキレイに見えるかも・・・翌朝、家から歩いて5分の小さな山へ日の出を見に行くことにした。(近っ!)
「6時には出るぞ」
翌朝、ひんやりした空気の中を歩いて目当ての場所へ行くと、ちょうど太陽が顔を出したところだった。「うわー!すごい!」と大喜びの娘。たしかにキレイだ…と眺めているうちにどんどん昇る太陽をスマホで数枚撮った。写真で見るとなんてことないただの朝日だけれど、誰もいない早朝、冷たい空気の中で眺める日の出は格別だった。
「空の色がキレイなとこ行きたーい」と娘。そんなもん遠く行かんでもコンディションとタイミング次第でどこでも見れるわい!と6時前に起きて近くの高台狙ってやってきて娘たちとサンライズ拝んだ。「わーきれい」言うてる間に日が昇った。 pic.twitter.com/1r6T2dLRo9
— 唐木俊介 (@s_karaqui) 2018年10月13日
6時半、家に戻り朝食。いつもと違う休日の朝を楽しむ娘たちは感激したままだ。「あんなキレイなとこがあったんだね!」いやいや、すぐ近くの、前からよく知っている場所じゃないか。
みんなが寝ている時に、起きて行動する。
誰もいないところに、いる。
近所のありふれた風景も、アプローチを少し変えるだけで、その見え方は大きく変わる。辺境はすぐそこにもある。
そこは遠いようで近い。近いようで遠い。日常に隠れる希少な場面を見つけ出して密かに感動する、その感覚を持たずにただ物理的に遠くへ行っても、得られる感動なんて知れてるんじゃないか?というわけで、テレビで見たどこかの国へはこういう経験を沢山積んで大きくなってから、アルバイトで貯めたお金で行ったらどうだ娘よ。
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遠い近いの話でいうと、近場で体験できるのにわざわざ遠くに行って、非日常感を増幅させる人もいる。
飲み友達で先輩のAさんは、ちょっと変わった趣味を持つ。Aさんは週末に車で1~2時間かけて、住んでいる町から遠く離れた山奥のラブホテルに行くのだ。ほら、田舎の方に行くとあるじゃないですか、昔のカラオケボックスみたいな感じで、敷地内に1階建ての小屋みたいなのが沢山並んでる感じのホテルが。Aさんは、パッと見では営業しているかどうかも分からないような、そういう古びたホテルに行って、部屋のテレビで常時流れているエッチなビデオを夜な夜な楽しむというのだ。
一人で。
・・・。
「それって、どういうところが良いんですか?」
「いやぁ、ようわからんけど、エエんよな。俺はとにかく遠くへいきたいんよ。田舎の方行ったら古~いAVばっかり流れてる所があって、そういうのでオオッってなるんよ。新見 (岡山県新見市…僕達が住んでいる広島県福山市から車で1時間半)とか行ってさ。オマエも行ってみ。行きゃあわかるよ」
いや行かんわw オオッってならんわw しかしまあ、AさんはAさんだけの独自の楽しみ方を見つけ、週末にひとり遠くまで車を走らせているわけだ。ありふれたムフフなビデオも、アプローチを少し変えるだけで、その見え方は大きく変わる。変態はすぐそこにもいる。
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・・・そんなん言うてたらもうすぐ22時か。今日はこれから少し眠って、2時出発で海へ行く。中国山地を抜けて山陰日本海へ。明日は波もありそうだ。皆が寝静まっている時間にムクっと起きる。道具を積み込み、人も車もいない真夜中の山道をひた走って海へと向かう。夜明けの少し前に辿りついたらそこから丸一日、ただひたすら自然と戯れる。サーフィンに限らず、アウトドアというのは非日常の要素がギッシリ詰まっている。多くの人がどっぷりハマるのもよくわかる。
明日はどこでどんな波が割れるのか。誰もが見向きもせず通り過ぎる場所や、少し前まで微妙だったポイントで、人知れず素晴らしい波が割れることもある。そこはすぐ近くなのになかなか辿りつけない。そんな波を見つけるまでの道のり、その心理的な距離はとても長い。海底の地形、気圧配置、波向き風向き・・・沢山の条件が満たされた時にチラっと現れるエクセレントなやつ・・・ホンマになかなか出会えんわ・・・。
写真は2週前の夜明け。山陰某所にて。この日もなかなか良い波だった。
さて明日の朝イチはどうかな。
あっ、そういえば今夜は海に途中で新見を通るんだった。当分会ってないけど、Aさん、元気にしてるかなぁ。
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