庭の一画に自転車置き場を作っている。
前回のブログで「建てる場所を決め、水平と直角を出した」というところまで書いた↓↓
足場用の単管パイプを使った簡素な構造の自転車置き場とはいえ、基礎はコンクリートでしっかり固めたい。
よし、コンクリート買いに行くか。
とホームセンターに行っても、コンクリートは買えない。買えるのは、コンクリートの材料だけだ。「コンクリート」とは、砂、砂利、水などをセメントで凝固させた硬化物のことだ。ちなみに「セメント」は水などの液体と重化合して接着・硬化する粉末のことで、ホームセンターに売っているのはこのセメントか、セメントと砂や砂利があらかじめ混ざったモノだ。これを買って帰り、水と合わせて練るしかない。
【セメント】= セメント
【モルタル】= セメント + 砂 + 水
【コンクリート】= セメント + 砂 + 砂利 + 水
という区分は、あまり知られていない。
高校の時に英単語帳で "concrete” という単語に「具体的な」という意味があると知った。えっ?これってあの、コンクリート?と驚いたこともあり、この英単語はすぐに覚えた。ところが僕がコンクリートとは何かを具体的に知ったのはそれから10年以上も後のことで、こういうところが我ながら間抜けだなあと、ブツブツ言いながらセメント・砂・砂利を買って帰るのであった。
家に帰り、作業開始。
夜な夜なコンクリートを練る。少し水を多めにして練り、時間を置く。砂利が自重で沈むのを待ってから、上層部分をすくってパイプの淵へ、砂利を含んだ下層部分をブロック周辺へ流し込む。水準器という便利な道具でパイプの垂直を確認・維持する。
翌朝には、硬化している。
・・・次は週末、単管パイプの骨組みである。
日中は会社で仕事をしているし、休日も色々とやることがある。大きな音が鳴る電動工具は休日の日中、空いた時間に使う。音が鳴らない塗装作業などは平日会社に行く前か、仕事から帰った後でやる…といったふうに、工程を細かく刻んで、少しずつ進める。
某日。単管を繋ぐクランプを塗る。
某日。屋根の下地を切る。縦横の接合部は切り込みを入れて強度を出す。
某日。屋根の下地を塗る。
と、骨組みの材料ができた。
某日。骨を組む。
骨組みができた。
次は屋根だ。
屋根材は「オンデュリン」というフランス製の波板を使う。
作業は無理のないペースで、少しずつ進める。
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我々素人のDIYは、マイペースで進められるところがいい。
「なんとなくこんな感じ」というぼんやりしたイメージを、途中で修正しながらゆっくり形にしていくのは面白い。最初からズバリ「これを作る」と詳細まで決めても、なかなかそうはいかない。段階ごとに立ち止まって考え「こうしてみよう」と決めて、やってみる。「よしよし」と「やってしまった」を繰り返しながら、都度ベストな仕上がりを目指して少しずつ進めていくと、完成形のイメージは自然と向こうからやってくる。「嗚呼、俺が作りたかったのはこれだったのだ」という感覚がある。振り返れば途中の「やってしまった」も愛せるから不思議だ。これは何かに似ている。
いや、そういうのはいいから、次やれよ俺、と自分に言い聞かせ、側面のフェンスに取り掛かる。
決めた通りの寸法にカットし、防腐剤を塗る。
違う色の防腐剤をハケで散らして、少し遊んでみる。
二度塗りしたら次は、壁を貼る。
厚さ18mmの端材で均一にスペースを取り、上からビスで留める。
ビスの頭にも屋外用塗料を塗っておく。こういうちょっとした作業が仕上がりに効いてくる。
組み上がってきて「おお、なかなかいいな」と見れば見るほど、足元の地面が気になってきた。土のままというのが、どうも味気ない。
というわけで、とある業者に電話をかけた。砕石を敷くのだ。ホームセンターの25kgパックは高い。その上、運ぶのも大変でやってられない。こういう時はダンプ1車分を直接買う。
ダンプの荷台から一輪車を転がして、撒いて均して、縁取りを仕上げる。
仕切りのモルタルが固まって端まで砕石を敷けば、
できた。
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<BEFORE>
<AFTER>
できた。と、眺めているところに、近所のおじさんが通りがかった。
「おお、ようこんなん作ったな。難儀じゃったろう」
と言われて、少し戸惑った。
というのも、振り返ってみると「難儀なこと」など、ひとつもない。たしかに「自転車置き場を作ろう」と思い立った時は、さてどうするか、難しそうだな、と頭を抱えた。ただそれは「どうやるか、よくわからなかった」のだ。
全体の流れを
1: 区画決め
2: 基礎
3: 骨組み
4: 屋根
5: 壁
と分けて、
1.区画決め【 1-1 ライン決め / 1-2 植木抜く / 1-3 穴埋め / 1-4 地均し 】
1-1ライン決め【1-1-1 長方形を出す / 1-1-2 杭を打つ ・・・】
1-1-1 長方形を出す【 1-1-1-1 基準点決め / 1-1-1-2 横辺決め / 1-1-1-3 糸張り ・・・】
・・・
と、どんどん細かく分けていけばいい。最後の分類は「材木に線を引く」とか「ノコギリを持つ」とか、そういう単純な動作まで分かれる。それらひとつひとつは、どれも極めて簡単なことだ。
とにかく分ける。これに尽きる。
カメラロールにこんな写真があって、メモをよく見ると、
「バンド 下地ぬる」「***用意」などと書いてある。「バンド 下地ぬる」というのは、色を着けたい金属のバンドに塗料が乗りにくいので、専用の溶剤を下塗りしておくということだ。まず下地を塗り、乾燥させている間に1300mmの木材を4本切り出し、下地が乾いたらそこにスプレーで色を着ける。動線や作業内容を考えた上でムダ無く作業しようと、その順序を考えて紙に書いている。他の人が見たら「しょーもない」と笑いそうなことまで、いちいち分けて書いている。分ければ分けるほど簡単になって、思い通りの仕上がりに近づきやすいのだ。
難しくて「わからない」のを「分からない」と書くのはそういうことだろう。たしかに、分ければ、よく分かる。具体的に。
あっ、
と、改めて "concrete" を辞書で引いてみると、そこには「具体的な」の他に、「明確な」「有形の」「凝結した」とあった。最初はどうしたものかと頭を抱えたDIYも、細かく工程を分けながら頭と身体を動かしているうちに、形になった。振り返れば最初に感じたモヤモヤは消え去っている。これはまさに、コンクリートではないか。
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さて、完成したことだし、娘たちの自転車を運ぼうか。と、外に出てみると、まさかのこの段階で致命的な問題が発覚した。
自転車が入らない。
(了)
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